2019年12月17日

デザイナーズノート-プロジェクトユニバース(原型)

HOYGAMESのやざわです。

ゲームマーケット2019秋では「プロジェクトユニバース」を新作として販売しました。

このゲームは制作期間が2年と、今まで作ったゲームの中で最も長期間で、
大規模なゲームとなりました。

これがどんな流れで作られたのか、文字に残しておこうと思います。

デザイナーズノート-プロジェクトユニバース(始まり)の続きです。

このゲームがどのような流れで変わっていったのか、
こちらの資料を参照していただくとわかりやすいかもしれません。

■ファーストコントラクター
山内さんから頂いた要素は以下のものがあります。

・ロケットに荷物を積んでステーションに運ぶ
・依頼には期限がある
・ロケットのパーツを製作したり、それに値付けをして売りに出したりする
・ロケット発射台に所有者がいて、使わせてもらうことで利益を得る

当時要素を整理した情報を見てみると、
1ラウンドが6フェイズになっており、アクション種類は6種類、
フェイズごとに手番性だったり同時だったりと処理が煩雑だったりしていました。

一つ一つ実際に試していき、問題点を出し、削除したりしていきました。

■パーツ関連
まず取り組んだのが、パーツの作成と値付け、売り出しに関するルールです。

作成するためには何かが必要で、
作成したパーツはどんなものなのかということを考えました。

おそらくコストが書かれたパーツタイルみたいなものがあり、
それを獲得することでロケットの性能が上がるんだろう、と思いました。

開発できるパーツタイルを並べ、そこからどれを開発するかを選ぶような感じです。

開発したパーツはおそらく性能の良いものなので、
初期装備はいらない装備として値付けして、売りに出します。

ここでこの流れが良くないことに気づきます。
おさがりの装備は誰も欲しがらないので値付けをする意味がありません。

パーツ制作したものが性能の良いものであれば、
すぐさま自分のものにすることになります。

ではこれを少し微妙な性能にして、それを売って稼げるという流れに持っていくか?
となるとそんなに性能の良くない装備はいらないので買わない。

たとえ初期装備より強いからしょうがない…買っていこう!という流れになったとしても、
それはゲームのサイクルやテンポが落ちるだけで良くないと思いました。
微妙な性能にする意味はないですね。

ならばと思い、制作したパーツは必ず自身の売り場に行き、
自分で買う必要があるとしてみようと思いました。
高値で値付けしておけば他人に買われづらいけど、自分でも買いづらい。

面白そうな感じはしたのですが、実際は煩雑でした。
自分/他人が買った時の処理が面倒だったり、
パーツ制作した後の値付けのダウンタイムが気になったり、
他人に買われたときは自分が買うつもりだったのに
意図せず買われちゃったというのがあまりうれしくないと思ったので、
他人からパーツを買うという要素は削除しました。

■ロケットの発射台の権利
自分の発射台を使ってもらえると嬉しい、を目指した要素です。

権利を持つということは、権利を得るフェイズのようなものが必要で、
その後発射に至るというのを想像しました。
その方法だとテンポが良くないかもしれないと感じました。

そこでStefan Dorra & Ralf zur Linde作の
「メドゥリス」のような形にしたらどうかと考えました。

制作の当初はプレイヤー一人は複数のロケットを持つ構想でいました。
発射台も複数あり、各プレイヤーはロケットを発射台に配置していきます。

発射台ごとに最寄りの宇宙ステーションや発射コストが違うというものになっていて、
最初に発射台にロケットを置いたプレイヤーは銀行にコストを払います。

次に誰かのロケットがすでに置いてある発射台に自分のロケットを置いた場合は、
置いてあるロケットの持ち主全員にコストを払うというものです。

しかし、ロケットが複数あってもあまり有効に使えなかったため
複数ロケット所持の案がなくなり、
結果としてロケットの発射台の権利収入も微々たるものとなり、
この要素もなくなってしまいました。

■依頼とUI
プレイヤーは荷物を運ぶ依頼を期限内に達成していく必要がある。
では、その期限をどうやって表現するかを考えました。

各自の個人ボードにあと残り3ターン、
残り2ターンみたいな表示がある個所にカードを置いて
手番が来るたびスライドさせていくか?

一括でラウンド終了時にしても良いかもしれない…。

その当時は「ブレーマーハーフェン」を思い出し、
カードに時間トークンを置いていき、
指定の枚数溜まったら期限というのが、
視覚的に分かりやすくて良いなと思っていました。

それと同時期に「クランズオブカレドニア」を遊んでいて、
目標カードの獲得コストを見て、依頼カードの仕組みを閃きました。

「クランズオブカレドニア」は
目標カードを獲得するときにお金を支払う必要があるのですが、
その金額はラウンドごとに違います。
後半のラウンドになるたびに金額は増えますが、
1ラウンド目は、支払うのではなく5金がもらえます。

これを見た時、このデザイナーは1ラウンド目は目標を取れよ、
というメッセージを込めたんだなと感じました。

それと同時に、
目標カードには「期限」というリソースが乗っていて、
これを消費することでアクションをしていくのはどうだろうか?
期限が0になるとその目標は失敗となるようにしよう、と。

これにより、プレイヤーはいつかのタイミングで
期限を獲得するために必ず目標カードを獲得することに意識が向くようになります。

期限の数を取るか、達成の難易度を取るかをざっくりとではありますが、
真剣にプレイヤー自身の責任で目標の獲得を行うようにしたかったのです。

「ブレーマーハーフェン」と「クランズオブカレドニア」。
この二つのゲームが依頼カードの仕組みを生み出し、
自分の本業ともリンクし、発想が膨らみました。

このゲームは面白くなるという確信を得て、
テンションの上がった自分は、
山内さんに頼まれた12月中にひたすらゲーム制作をし、
かなりの回数のバージョンアップをしました。

ちなみに依頼カードの仕組みは最初のバージョンより整理をして、
今の形に落ち着いたため、とてもマイルドになりました。

■カウントダウン
依頼カードの「期限」はすなわち時間だと考えた自分は、
プレイヤーが期限を消費するたびにゲーム内の時間も経過していくだろうと考えました。

プレイヤーがアクションで消費した「期限」をしめすキューブを、
ボードの周囲に置いていき、規定数までたまったらラウンド終了としようとしました。

これが非常にスリリングで、製品版でも調整された姿で残っています。

しかし、このカウントダウンの調整が相当に大変でした。
どのアクションでどれだけ時間を進ませるか悩みました。

アクションの強力さに応じて消費量を増やしたりすると、
全員が消費量の大きいアクションをしたときあっという間に時間が進み、終了してしまう等
カウントダウンのトラックを伸ばしたり、
アクションに必要な期限の調整に時間を取られました。

初期は残業システムはなく、時間が来たら即終了だったので、
理不尽さがより一層強かったのです。

■アクションの選択
手番のアクションの選択方法に関してはまったくアイディアがありませんでした。

とりあえず過去作の「ドラゴン」、つまり「コンコルディア」の方法で
カードに書かれたアクションをしていこうと思いました。

これは口で○○します!というよりも視覚的にわかりやすいだろうという
なんとなくの理由でした。

プレイヤーは全てのアクションに対応するカードを持って1枚使用して、
アクションするという流れです。

カードは使い切ったら「回収」カードで使ったカードを全て手札にもどします。

わかりやすい仕組みではあるものの、
このゲームでは行うべき工程がそこそこあり、
かなり先の手まで計画できていました。

1手を打つ際にかなり先まで考えてアクションし、
途中で予定が狂うと計画を1から考えてアクションすることになります。
毎手番、全員が長考をする、1手1手が重いゲームだったのです。

これに関しては答えが見いだせず、
1年くらい、いろいろなバージョンを試しました。

老師敬服式にするか、ブルゴーニュのようなダイスアクション選択にするか、
変更するたびに時間経過の調整をする必要もありました。

どうにかして1手の重さを軽減したいということと、
時間経過の調整が大きな課題となりました。

■ロケットの打ち上げ
ロケットの打ち上げは「打ち上げフェイズ」で
全員がそれぞれ必要な素材を支払って、
各々が達成できるかを判定するという形で考えていました。

試してみてあまりに作業的で、
一人の判定が終わるまで他の人はそれを見ていることになります。

これは非常に良くないと思いました。

前々から、
いつか使いたいと思っていた「スパイリウム」というゲームの
任意タイミングでのフェーズチェンジを導入しようと思いました。

スパイリウムでは、
前半にワーカーの配置をし、
後半に進むことを選択すると以降は配置ができなくなり、
配置したワーカーを発動させるフェイズになります。

早く後半へ行き発動しないと欲しいアクションが取れなかったりしますが、
前半置かなさすぎるとアクション数が少なくなってしまう、
という悩ましさがあります。

こちらでは「打ち上げフェイズ」は無くしてしまい、
アクションフェイズ内で打ち上げるようにし、
打ち上げると今までできていたアクションができなくなるという風にしました。

これがカウントダウンと非常に相性がよく、
打ち上げのタイミングがこのゲームの肝になりました。
これは製品版でも変わらず体験できると思います。

デザイナーズノート-プロジェクトユニバース(調整)へ続く
posted by やざわ at 13:53| 自作ゲーム:プロジェクトユニバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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