HOY GAMESのやざわです。
ゲームマーケット2024秋にて新版のハリコッツがForGames様より先行発売され、
12月13日から全国で販売されているので、是非とも買っていただけると嬉しいです。
このデザイナーズノートでは、
新版のハリコッツではなく、主に旧版のハリコッツのデザイナーズノートになります。
ちょっとだけ新版の話もしていますが。
■発端
ボードゲームカフェに来るお客さんで「頭を使わないゲームがしたい。」という人がいる。
ということを耳にしました。
「ゲームって頭を使うものじゃない?頭を使わないって…なんでボードゲームカフェに…?」
という考えが浮かぶかもしれませんが、
おそらくお客さんはカフェに来る前に「頭を使わない」と思ったゲームを体験していると思います。
それが何なのかを知れば、正解に近づきそうではありますが、
とりあえずそういったパーソナルなところは考えずに、
頭を使わないというのはどういうことか考えてみました。
自分の中で出した答えは、
何も考えずに毎日、思考停止してやっている事は「頭を使わない事」じゃないか?
日常生活で反復して行っていることはもはや「思考停止している」と思っているのではないか?
例えば、毎日行っている「食事」
食事をする際に、鼻の穴や耳の穴から食べようとはしないはずです。
(もちろん、特別な病気とか都合でそうしなくてはならない人は別ですが。)
それに限りなく近い存在であれば、考える必要はなく、
遠い存在であれば覚えることが多く、頭を使っていると感じるのではないか。
まぁ、色々考えを巡らせてますが、
結局のところ「人による」って思います。
頭を使わない物が何かについて頭を使うってのもなんだかおかしい話ですね。
■着想
ちょうど、様々なゴーアウトやトリックテイキングが登場している時期でした。
身近な友人が作ったゲームで言うと、
「ゴーアウトガール」がちょうど発売されていたと思います。
テストプレイ等も参加させてもらったりしてました。
あとは「Scout!」も大ヒットしていました。
現在もしていると思います。
そんな時、ゴーアウトと言えば、自分は大富豪が好きで、
学生時代はよく昼休みに大富豪をして遊んでいたことを思い出しました。
そしてこうも思いました。
大富豪はルールが多い、と。
ローカルルールも多数ありますが、
自分が思い出すだけでこれだけ特殊ルールがあると思います。
・同数の複数枚出し
・連番の複数枚出し
・枚数の縛り
・革命
・革命返し
・8切り
・スートの縛り
・最強ランクでは上がれない
ボードゲームで遊ぶようになって
「エスカレーション」を初めて遊んだ時、
その単純明快な判定方法に衝撃を受けたのを今でも覚えています。
同じ数字は複数枚出せて、それらは合計値になる。
枚数などの縛りは無く、単にデカい数字を出すだけです。
特に連番を出すときの強弱説明が大富豪で面倒だなと思っていたので、
「全部ゴーアウトはこれでいいじゃん!」となったのですが、
肝心のエスカレーションがゴーアウトではありません。
エスカレーションは手札からカードを出し、
出した枚数分、共通の山札からカードを引きます。
場のカードより強い数字を出せない場合、
たまっているカードを失点として受け取ります。
山札が無くなり、誰かの手札が無くなったら終わります。
つまり、山札が無くなるまでに失点を抑えようというゲームで、
手札をなくすことが目的ではないのです。
エスカレーションは大好きなんですが、
一緒に遊んだ人が、カードを出した後にまたカードを引くことに対して、
なんだか釈然としない気持ち、表情になっているのを何度も見てきました。
エスカレーション大好きなんだけどな…。
…じゃあ、エスカレーションでゴーアウトをしよう!
となったわけです。
■ハリコッツの基本方針と調整
エスカレーションに惹かれた理由として、その単純明快な判定方法にあります。
そのためハリコッツも同様に単純明快なゲームにしようと思いました。
そこで発端となった「頭を使わないゲーム」が指針となって調整をしました。
・1〜7のカードの削除
エスカレーションに存在している、
1〜7の好きな数字にしてもいいよというカードで、
様々なカードとペアにして数字を高めることが出来ます。
柔軟性があり、気持ちの良いカードではあるんですが、
どの数字で使うべきか頭を使うと思いました。
エスカレーションで大体は7として使うので、
すべて7としようと思い、
ハリコッツで6や7のカードを多くしているのはそういう理由になります。
発売されて時がたち、今思い返すと、
これはセットへの柔軟性が損なわれ、
引き運の要素が上がっている要因でもあります。
しかし、もしこれを採用していればセットが作りやすくなって、
1手番目に即上がる人が増える可能性も上がると思われます。
それよりも、ゲーム開始時に「このカードはね…」と
カード効果を説明させたくなかったというのが当時は強かったと思います。
・パスカードの削除
エスカレーションに存在している、
個人的に不満があるカードで、
出したらどんな値でもパスできるカードです。
特殊カードを入れたくなかったため、
そして無条件で最強のカードを作りたくなかったため、
代わりにめんどくさいカードを加えました。
条件付きで強くなる1と2のカードです。
あそこだけルールが多いのは
おそらく普段からめんどくさいゲームを作っている自分が出てしまったんだと思います。
本当に申し訳ないです。
15を超えるか超えないかをけん制し合って数字を上げるような場面、
じりじりしてて結構好きです。
多人数で遊んでいる時に手札に1や2を多く持っている場合は、
やや高めの数字をスタートで打ち出すことで、
15を超える数字で返ってくることが多いので、
1や2を狙って出しやすかったりします。
・個人山札の採用
ハリコッツはゴーアウトガールに近いライフ制になっています。
それはライフ制にしよう、と思っていたわけではなく、
採用したルールがライフ制ともいえるよねという感じだったので、
じゃあライフ制みたいに生き残りのルールでも勝てるようにしよう、
となっています。
まずは山札を採用しようというのが先にありました。
大富豪ではカードが出せない時、
パスで何もできないのは嫌だなと思っていました。
実質、後の手番で手札が出せるかどうかわからない状態が維持されます。
夢も希望もない手札では、負けを待つばかりで気分は落ち込んでしまうでしょう。
Scout!では手が詰まったら、
Scoutするという革新的な手法で手札の改善が行えました。
ゴーアウトガールでは山札からカードを引いて、
いらないカードをダメージとして捨て、手札の改善を行えます。
すごく気持ちが良いです。
ハリコッツでは手札の改善はさせたいが、
プレイヤーになるべく選択の余地を設けさせたくないと考えていました。
非常に乱暴ですが、山札からカードを引く。
これだけが最初の実装したシステムです。
着想を得ているエスカレーションもある意味これと同じなわけですし。
これを実装した時に大きな問題点として、
山札が切れるまでゲームがなかなか終わらなくなります。
エスカレーションに近い姿になります。
自分はそんなに長く遊ばせたいと思わないし、
引ける回数を制限したらどうか、じゃあ引けなくなったら負けにしよう。
そういえば「アニマーレタッティカ」は
個人で山札を管理する方法を取っていたなということを思い出し、
個人山札にしたという流れになります。
テストをしていて、山札はHPなんですね!と言われ、
ああ、たしかにそうだな!と後から気づいたパターンです。
■山札についてもうちょっとだけ
結局山札からただ引くというルールは乱暴なまま実装されていますが、
テストを繰り返していくうえで様々な意見がありました。
「ただ引くのが運すぎる」というのが主なもので、
山札から2枚引いて1枚を選ぶぐらいにして欲しいとか、
山札の中から選んで1枚を加えるにして欲しいとか、
ランダム引きでもいいからせめて山札の中身が全部わかってる状態にして欲しいとか、
そういった感じのものです。
まず、2枚引いて1枚選ぶというルールは
プレイヤーになるべく選ばせたくないということで不採用にしました。
山札の中の内容を見れる系のルールは全体的に不採用にしました。
山札のルールで気に入っているところとして、
中身がわからないことで引いてみたところ、
何とかなる瞬間が発生した時、すごく嬉しいというところです。
アニマーレタッティカがまさにそれを体験したゲームです。
山札の中身を見て、すべてのカードが弱かった場合、
絶望するのは嫌だな…とも思います。
山札から引いた時、
めちゃくちゃ弱いカードを引いた時のガッカリ感は強いので、
山札用のカードセットを作ろうかという案もあったのですが、
山札のセットアップが面倒ですし、
引くことが絶対に良いとなるのも嫌だと思ったので、それも不採用になっています。
とにかく手軽に始めてサッと終わるようにしたかったんです。
■カードの調整や印象
1〜7のカードの削除の項目で少しだけ触れました。
エスカレーションの枚数を参考にしましたが、
何度もテストを繰り返して枚数を調整していきました。
同じ枚数を一緒に出すと大きい数字になるというルールのため、
大きい数字のカードは枚数を少なくするというのは確定している調整ですが、
小さい数字のカードの枚数を多くするのはあまり良くなかったと思いました。
小さい数字をかなりの数を手札に持っていても大きい数字になかなか対抗できないため、
中間の数字を多くする形が良さそうと思いました。
そのため、限界まで中間の数字を多くしています。
・1と2のカード
特に1〜3はカードとして不要なのではないかと思っていました。
テストプレイを繰り返していく中で、
6のカードが多くなったことで12、7のカードが多くなったことで14になりやすく、
15がこのゲームでキーになっている数値だなと感じるようになりました。
そのため1と2に15以上の時に強くなるという要素を取り入れ、
出しやすく、かつ強力なカードにしました。
同様に3や4にもこのような効果をつけていくことも話に上がることはありましたが、
これをどんどん設定したら、キリがなく数字が上がっていくことになりそうだったので、
1と2だけにとどめました。
・3のカード
3のカードは1枚しかなく、圧倒的な最弱カードです。
これはエスカレーションの1のカードをインスパイアしており、
本当に引くとガッカリします。
でも、すごくわかりやすく嫌なカードで、
今でも心に残っている良いカードだなと思いました。
ハリコッツは一応、パーティゲームだと思いますので、
わかりやすい嫌なカードとして、その要素を残したいと思いました。
引いたら心の中で悲鳴を上げましょう!
ちなみに新版の上級ルールではちょっとだけ価値が上がりました。
・4と5のカード
4と5のカードはなるべく少なくしたいと考えました。
ただ、高い数字のカードよりもやや枚数は多めにしようという方針です。
少なくしたいと考えた理由としては、
山札から引いた時のガッカリ感が強いんですよね。
1や2ならまだ15を超えたときの希望を持てるものの、
重ならないとなかなか出しにくい上にそれでも強くない…。
他のカードの枚数調整した後に、4と5の枚数を調整しました。
・6と7のカード
6と7はこのゲームにおけるメインとなる数字です。
6はちょうど10枚あり、運に恵まれれば、
手札に10枚引いて1手番で上がることが可能です。
9枚や8枚でも、残りの手札によっては即上がりが現実的です。
引けたらラッキーを許容しています。
ただ、なかなかそろわず、脱落していく以上に、
即上がられるのが頻発するのはさらに印象が良くないと思いました。
そのため、これ以上6や7の枚数を増やさないようにしました。
新版でも枚数は増えていません。
また、6や7は4や5と違い、
山札から引いても許容できる数字に収まっており、
非常に感じの良い数字です。
ハリコッツでは大体の場合、
2〜3枚をプレイしていくことを想定としており、
枚数が多く、山札から引いても後から常にできる可能性がある、
ベースのようなカードになっています。
これらを基準に枚数を設定して行っている感じですね。
他人の手札の枚数状況を見て、
自分の手札に1や2が無い時は7を2枚出すと、
14で意外と誰も出せずに自分の連続親が出来たりします。
・8のカード
枚数がそこそこあり、2枚出しをすると2のカード1枚出し封じる、
16にできる実は強力なカードです。
7よりも弱く、6よりも強いといった感じのカードです。
・9のカード
枚数がそこそこあり、2枚出しをすると1と2のカード1枚出し封じる、
18にできる非常に強力なカードです。
2枚出し以上がかなり現実的で、しかも数字も単体で高いので
個人的にはおそらく最強のカードではないかと思います。
旧版だと8と同じ枚数でしたが、新版だと8よりも枚数が少なくなりました。
・10と11のカード
単体で使うことが出来、数字も高いので強力ですが、
枚数が少なくなっており、
2枚出しできたら運がよく、3枚出しはかなりの強運かなという印象です。
10は3枚出しできても1や2の2枚出しに勝てないし、
11は1の2枚出しには勝てない、という感じの調整です。
テストプレイを繰り返していくうちに実は大きい数字は枚数さえ少なければ、
追加しても大丈夫そうである、ということに気づくことになりました。
・15のカード
無条件で単体では最強のカードですが、1枚しかありません。
出しやすいカードではあるのですが、
1や2の制限を取り払ってしまうリスクがあるカードです。
これはゲームが最終盤になった時に、
「どうせ、残りの1枚は1か2でしょ」と、他のプレイヤーに7を2枚出された時、
カウンターとして出せると盛り上がるかもしれません。
また、12〜14を用意しなかったのは、6や7の価値が落ちると思ったからです。
ただ、前述のとおり、枚数を抑えればそれ単体ではあまり脅威ではないことに気づいて、
新版では12が2枚追加されています。
■最後に
ハリコッツは普通のゴーアウトで、
なんら新しい要素は無く、ゲーマーには物足りないゲームかもしれません。
トリックテイキングや特殊なルールが追加されたゴーアウト系ゲームをたくさん遊んでいて、
面白いけど、ルールが多いよな…、もう何もかも捨ててしまいたいと、そう思いました。
フォーリングの制作中だった疲れもあるかもしれません。
一周回って、このくらいで良くないですか?
ボードゲームやってきていない人に出す際に、
新しいものはないけど、このくらいのルールでなら遊べそうじゃないですかね?
そんな思いから、このゲームは作られています。
逆に、ゲーマーなら各カードの枚数を意識したり、
それぞれの数字に込められた意図を瞬時に察してプレイされることでしょう!
多分ね…。
新版では上級ルールが追加されており、そちらはForGames様が考えてくれました。
旧版でも得点ルールを当初入れようとしたんですが、
そのルールが公平性を取ろうとして面倒になってしまい、
結局2勝で勝ちという風にしています。
新版の上級ルールはいれたほうが面白いと思いますし、
自分も今後は常に入れて遊ぶと思います。
ただ、頭を使いたくない人や初めて遊ぶ人は
1ラウンドだけ基本で遊んでみて、その後、上級に切り替えるか検討すると良いと思います。
以上、おしまいです!
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