2019年12月26日

デザイナーズノート-プロジェクトユニバース(説明書)

前回で完結のつもりでしたが、
説明書に関しても書いておこうと思います。

プロジェクトユニバースの説明書は16ページあります。
それに加えて、両面印刷のサマリーもあります。
そして、日本語と英語のものが同梱されています。
(ちなみにサマリーは途中で必要だろうと判断し、足すことにしました。)

■スケジュール
以下の工程が必要だと脳内でなんとなく想定しました。

1, 初稿完成(やざわ)
2, 校正(HAL99さん)
3, 校正の修正(やざわ)
4, 校正の確認(HAL99さん)
5, 英訳資料の作成と発注(やざわ)
6, 説明書の英訳(saigoさん)
7, 資料と英訳の過不足確認(やざわ)
8, 資料確認後の修正(saigoさん)
9, 日本語/英語のテキスト流し込み(長谷川さん→井上磨さん)
10, 説明書用の図素材の切り出し(長谷川さん)
11, 図の当て込み(長谷川さん→井上磨さん)
12, 最終確認(やざわ、HAL99さん、saigoさん)
13, 最終確認の修正(長谷川さん→井上磨さん)
13, 最終確認の修正確認(やざわ)

文字にしてみると大変な量の作業があります。
実際に大変な量だったと思います。

■初稿
初稿となる説明書は自分が作成します。
PowerPointで作成しており、図はネット上から適当なものをあてがったり、
図形を組み合わせて自分で作成します。

こんなようなファイルを2019年の1月、
年末年始の休みを利用して作成しました。
初期はアートがドットになるかもしれないということで、
8ビットユニバースというタイトルにしていました。

■説明書にかける想い
説明書の書き方は人それぞれだと思います。
そして、「飲み込みやすい説明」の感じ方も人それぞれだと思います。
なので、ここで書くことは必ずしも正解ではないと思います。

自分がどんな想いを持って説明書を書いているかを記録として残します。

■説明書は必要?
まず、根本的なところですが、
なんでルールを書き記す必要があるのか?というところです。

それはゲームを遊ぶためにルールを知る必要あるからだと思います。
当たり前のことですね。

でも、人によってはルールなんて知りたくない、楽しい体験がしたいだけ、
みたいな人がいるかもしれません。

そういった人には説明書は必要なく、説明してくれる人がいればいいわけです。
動画に残された資料や、ルールを知る人(作者とか)に聞いたりすればいい。
だからわざわざ書き記す必要なんてないのでは?ということも考えられます。

自分は自分が死んだ後や、現状のメディアが使えなくなっても遊べるように、
書き記していると思っています。

もしかしたら紙を読む必要のない、
視力を超越した感覚が未来で発見されるかもしれませんが、
そこまでの想像力は自分にはありません。

■目的
次になんでルールを知る必要があるの?というところです。
それはゲームに参加する人全員の共通目標が「好奇心を満たすこと」である、
と考えているからです。

好奇心にもいろいろと種類があると思っていて、
・どんなルール、仕組みが使われているのか知りたい
・ルールなんて知らないけど、とにかく未知の体験をしたい
・前回遊んだ経験を生かした手法を試したい

これらの好奇心をゲームに参加している全員が
円滑に満たせるようにしたいと思っているに違いないから、
ルールを知る必要がある…と思って自分はルールを書いています。

■勝利条件
自分はプレイヤーの勝利を目的にしてルールを書いていません。
なので、何をすればいいのかという答えを説明書上で解説する気がありません。

勝利条件については最初に少し触れるのですが
得点をとったら勝ちとだけ説明し、
得点をどうやったらとれるのかはすぐに説明していません。

それは同じ説明をしないようにするためです。

どうやって得点をとるの?
→依頼を達成すると取れる
→どうやったら依頼をとれるの?
→依頼獲得のアクションをする
→どうやったら依頼獲得のアクションができるの…

と最初に結論から説明したところで疑問が尽きず、
逆に頭に入らないのではないかと思っています。

それと、この手法で説明した後、
結局また同じ説明をすることになると余計に頭に入らないだろうと思っていて、
流れで1度だけ説明することにしています。
説明書のページ数も節約できるので…。

ただ、今回は何度か同じことを書いているところもあります。
それは説明する頃には忘れていそうな要素を再確認させようとしているためです。

■説明を受ける人の視点
自分がゲームを遊んでいるときに一番重要な瞬間と感じているのは、
「自分の順番が回ってきた時」だと思っています。

あくまで自分の場合ですが、
もし、自分の番で何ができるのかわからないという状況になったら、
ルールを説明してくれた人に申し訳ないという気持ちや、
自分の理解力のなさを恥ずかしく思ったりしてしまいます。

そんなわけで自分の番が回ってきたときに何ができるか、
を特に重視して説明書を書いています。

あと、見出しをこまめにつけるように気を付けているつもりです。
ゲームのプレイ中にわからないところがあった時は説明書を見ると思います。
そんな時は大きい見出しがあると助かる、と思っているからです。

■校正
話を戻します。
ルールの校正は老師敬服、マメィに続き、
HAL99さんにお願いしました。

1月に自分の初稿を書いたわけですが、
まだそのころテストプレイも同時に進行していました。

3月にルールが完全に決まり、
4月〜5月にかけて最終ルールの修正と同時に
1月からゲームマーケット春でのマメィの再販に向けて動いていました。

5月にゲームマーケット春が終わり、
6月から本格的にHAL99さんの校正が始まりました。

説明書に対してきた修正点や疑問点を解決しつつ、
説明書に反映し、再度確認してもらうという作業を7月の中旬まで行いました。

■英訳
こちらも老師敬服、マメィに続いてsaigoさんにお願いしました。

今回長時間のゲームで、テーマが宇宙ということで、
国内よりも海外の人の方が好きかもしれないと思い、
英訳は絶対にしなければいけないなと思いました。

7月の中旬まで校正作業をしたのち、
そこからテキストだけを抜き出したファイルを資料として作成し、
saigoさんに送りました。

その間、修正があった場合は修正した個所を知らせる資料を送り、
9月上旬まで作業をしていただきました。

saigoさんから送られてきた英訳ファイルを見て、
こちらの用意した文章と数が合っているか、
ざっくりとおかしなところがないかなどを確認しました。
自分は英語がわからないので…。

■テキスト流し込み
説明書の文字を綺麗に整えてレイアウトをしてくれたのは
マメィでアートを担当してくださった井上磨さんです。

当初、長谷川さんにお願いしようと思っていたのですが、
絶賛アート作業中でそちらに取り掛かれる状態ではなかったのです。

「自分でやるか、磨さんに頼むかしてほしい。」と言われ、
ここまで完璧な状態で来ていて、
自分のような素人が作った見た目の説明書を
このゲームの箱に入れたくないと思ったのです。

ということで、ものすごく大変な作業と知っていたので、
申し訳ない気持ちでいっぱいで井上磨さんにお願いしました。

文字の流し込みとそのチェックはもちろん大変でした。
16ページが2冊、それを何度も何度も読みました。

そして、特に印象的だったのが図の割り当てです。

長谷川さんとはテストプレイも何度もしていて、
自分の適当に割り当てられた図が何を指しているのか把握されていましたが、
磨さんは一度もプレイしたことがなかったので、
どの図がどの絵素材を指しているのかわからなかったのです。

自分は説明書の中で図をたくさん入れたがります。

作者は内容物名や項目名を知り尽くしていますが、
遊ぶ人はその名前を出されても、すぐに何を指しているかわからないと思います。
いちいち内容物の項目で確認してもらうのも手間です。

そのため、図で「これをこう置く」と指示しないとわからないだろう…と
たくさん図を入れてしまうのです。

結局、図の切り出しは長谷川さんが行い、
自分は磨さんに最新の絵素材に切り替えたバージョンの説明書を送って、
それらを見本に作成していただきました。

9月〜10月の頭まで作業をしていただきました。

そして、出来上がった説明書は再度、
HAL99さん、saigoさん、自分で確認しました。

■突然の締め切り
自分は締め切りを大体10月の中旬、12日らへんと考えていましたが、
印刷所の方から連絡があり、
11月2、3日に到着なら9月30日までにデータを送ってと言われました。

9月30日はさすがに無理だ!ということで、
ギリギリの11月16、17日到着指定でどうか聞き、
10月6日まで締め切りが延びました。

しかし実質短くなってしまいました。
詰めが甘く、大変な目に合わせてしまい申し訳ありませんでした。

■最後に
説明書を完成させることに1年近く費やしてしまいました。
それでもわかりづらいところ、飲み込みづらい表現があるかと思います。
それは完全に自分の力不足だと思います。本当に申し訳ありません。

そして、自分は他の人が書いたゲームの説明書を読むのが好きです。

その中でわかりづらいけど何とか知らせようと努力しているのが感じられる説明書はとても好感を持ちます。

逆に文字だけで書いてあって、回りくどい表現で、
図も無しで放置されているのを見ると、心の底からガッカリしてしまいます。

そんな製作者さんたちに自分から言いたいことは、
「最悪、手書きでもいいので、図を入れて!」です。

ここまで長い文章を読んでいただきありがとうございました。
posted by やざわ at 08:05| 自作ゲーム:プロジェクトユニバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月18日

デザイナーズノート-プロジェクトユニバース(調整)

ゲームマーケット2019秋では「プロジェクトユニバース」を新作として販売しました。

このゲームは制作期間が2年と、今まで作ったゲームの中で最も長期間で、
大規模なゲームとなりました。

これがどんな流れで作られたのか、文字に残しておこうと思います。

デザイナーズノート-プロジェクトユニバース(原型)の続きです。

このゲームがどのような流れで変わっていったのか、
こちらの資料を参照していただくとわかりやすいかもしれません。

■根幹の確定
今までのことを踏まえ、根幹が決まっていきました。

・依頼カードによるリソースの獲得
・みんなが行動すると進むカウントダウン
・1アクションを決定して何かする
・準備と打ち上げの前後編

これは最初に打ち立てたものではなく、
手探りで何度もいろいろなことを試した結果です。

最初にコンセプトを決めよう!みたいな話を耳にするのですが、
自分の場合は一度もそのような作り方はしたことはないです。

根幹だけが決まったとしても、ゲームは何も機能しません。
これから細かいところの積み重ねをしていきます。

■労働力の調整
ゲームの制作中、最も時間がかかりました。

労働力の調整をすると以下の部分に影響していました。
・依頼による獲得数
・アクション個々のコスト
・カウントダウンのリミット

例えば依頼を獲得したときに得られる労働力が増えれば、
依頼を獲得する回数が減ります。
依頼に目を向けてほしいという部分から離れてしまいます。

かといって極端に減らせば、
依頼獲得のアクションを頻繁に行う必要があり、
自分がゲームを作っているときに一番大事なところと思っている、
「自分がこの一手で前進したな。」という感覚が薄れてしまいます。

当初はどのアクションをするにも労働力をコストで使っていて、
使用した労働力分、時間が進むという形にしていました。

非常に長い時間トラックがあり、労働力を使用するたび、
使用した労働力分の白いキューブを時間トラックに置いていました。

この二つの関係はかなり相性が悪く、
1年近く何度もアレコレ調整と修正を加えていました。

強力なアクションだからと労働力のコストを高めれば
同時にラウンド終了が早まってしまう。

時間を延ばすと緊張感がなくなり、
使用されたアクションによっては長いラウンドになってしまうこともありました。

加えて、いちいち時間トラックに白いキューブを置く行為も面倒で、
各自の個人ボードに一定量まで白いキューブをスタックして置き、
規定数まで溜まったらトラックに置く等、
コマを置く回数を減らそうという工夫もしたものの、
余計にめんどくさくなってしまいました。

この調整の方向に限界を感じ、方向転換をしたのです。

■問題の解決
調整を重ねていて次のような問題が出ていました。

・1手の重さからくる長考問題
・困難な労働力の調整
・やぼったいカウントダウンの処理
・理不尽なラウンド終了

手札に10枚近くのカードがあり、次の手番はこれ、その次の手番はこれ…と
先まで計画できてしまうとどうしても考えてしまうため、
その見通せる先をほんの少し先までに抑えようとしました。

手札を減らし、1枚に二つの効果を表示する、老師敬服のタイルのような方向で考えました。
しかしそれでも長考は無くならず、余計に組み合わせからどうするか考えるようになってしまいました。

必要な対応として、
カードで選択肢を極端に絞るのではなく、
どのカードでも最低限のアクションができれば、
1手1手慎重に打たなくなるのではないかと考えました。

そこで有効だろうと思ったのが「ロココの仕立て屋」のカードプレイシステムです。
最もランクの低い「見習い」でも、最低限のアクションができるようになっているため、
選択肢は大きく狭まらず、気楽にアクション出来るようになりました。

そしてランクはタイミングを意識させます。
最高ランクの「親方」を使用した時は親方でしかできないことを選びがちになります。
そのタイミングでしかできないことに優先度は高まり、
自然にプレイヤーの選択肢が狭まるようになっていると思います。凄い。

「ロココの仕立て屋」では計画フェイズというもので、
自分の山札から好きなカードを選ぶフェイズがありますが、
プロジェクトユニバースの1手1手を軽くすること、
テンポアップを目的にしていたため、
このゲームでは必要ないと思ったため、削除しています。

次に労働力の調整です。
労働力の調整とカウントダウンの処理は
上記の方向転換により同時に解決しました。

各プレイヤーの使用労働力をカウントダウンに紐づけて使うと、
作者である自分が調整とコントロールができないと判断したため、
切り離そうと決めました。

プレイヤーはカードを消費し手札がなくなるため、
手札の補充するときに時間を進めるようにすれば「回数」で
なんとなく調整できそうだと思いました。

これは以前よりマイルドになることは承知の上で変更しました。

プレイヤーの人数によって補充の回数が違うため、
時間の進みを調整する会議カードが必要になりました。

ラウンド終了タイミングが急に終わることが理不尽だという話は初期のころからあり、
全員の手番数を同じにしようかとか、トラックを伸ばそうかとか、
あまり根本的な解決策を見いだせていませんでした。

手番数を伸ばしたり、同じにしたところで準備に時間のかかるゲームなので、
プレイヤーによってはどうにもならないのです。
そこでテストプレイをしてくれていた、ちとさんから「アンドールの伝説」の話が出て、
残業システムが追加されることとなりました。

自分は「アンドールの伝説」を未プレイなので、
まったく同じなのかそうでないのかは判断できないのですが、
とりあえず、お金さえあれば手番を続けられるようにして
ラウンド終了タイミングが来ても備えられるようにしました。

今まではなすすべもなくラウンドが終わっていましたが、
対抗できる手段があるのは良い変更だったと思います。

■マメィ
プロジェクトユニバースの問題がたくさん積まれていた状態、
12月のうちものすごい数のバージョンアップを行い、
12月の中旬にマメィのベースを急に思いつきます。

自分はゲームのテストをする際、
視覚的に見えていないと遊びづらいと感じるため、
エクセルなどで図を組み合わせてボードやタイルを作ります。

チップは厚紙にお金サイズの図を無数に書かれた紙を貼り、
チョキチョキとハサミで切ったのち、裏面も張ります。
裏向きになって金額が見えなくなると困るためです。

プロジェクトユニバースのコンポーネント量は膨大です。

更新するたびに疲れます。

気分転換に作ってみることにしました。
意外と良さそうなことが分かり、調整し、
マメィは3月くらいにはルールが完成しました。
マメィのデザイナーズノートに詳しく書かれていると思います。

マメィのルールが固まった後はまたプロジェクトユニバースのほうに戻り、
テストプレイを行っていました。

マメィが一段落したタイミングでロココの仕立て屋タイプに方向転換し、
大幅変更を加えたので良い気分転換になったのだと思います。

■満足点と不満点
せっかくロココの要素を入れるなら、自分が好きな部分を伸ばそうと思いました。

自分のロココの一番好きなタイミングは
「親方(最高ランク)カードで親方(最高ランク)カードを購入する」行動です。
親方カードは唯一カード購入ができるカードで、
この行動をすると、さっき買った親方カードが手札にあるため
次の手番でもカードが購入できます。

カードを取るの、凄く楽しいと思ったのです。
コストは低めで手軽に獲得できるようにしてあり、
何度も取る機会を設けるために、ラウンドごとの補充用の山札があります。

次にあまり好きではない要素として圧縮(解雇)とマジョリティがあります。

ロココの説明書で「親方を全て解雇しないほうが良い」という記述があったのを覚えていて、
それがどうにも好きになれなかったのです。
親方を全て解雇するとカードを増やせなくなるからです。

実際にプロジェクトユニバースでも圧縮を試したこともあります
カード効果に別のカードを破棄する効果にして、
上記の親方廃棄の問題を回避しようとしました。
しかし、いったいどのカードを使ってどれを破棄しようとしたのか、
その都度混乱してしまいました。

破棄するカードの効果を使った後、手札、捨て札、山札の中から破棄するカードを選び、
破棄したのちにアクションをするので当初アクションで何をしたかったのか、
意識が途切れて、忘れてしまうからです。

破棄を選べる場所を絞ると使用できるタイミングが限られたり、
意識が途切れるところの根本的な解決にはなりません。

または破棄は使用したカードを対象にし、
初期の親方は破棄できないとするか悩んだのですが、
ルールを減らしたい段階だったので、
余計なルールを足すくらいなら、潔く圧縮はなしとして、
カードを集めたら集めた分だけ得点になるようにしました。

そして、マジョリティです。
数比べをして多くの数を占めている人が得点を得るという仕組みですが、
頑張ったのに全く意味がなくなるときが、「前に進んでない感じ」がして、
どうにか自分好みに改善できないかと思ったのです。

ロココにはあったドレスのようなものはプロジェクトユニバースにはないので、
マジョリティについては考える必要はなかったのですが、
後述の設備投資に組み込まれることになりました。

■設備投資
当初、設備は各自の個人ボード上に持っていて、
それを改善して行くというものになっていました。
つまり、Aさんは豆畑を凄く改善されたけど、
その豆畑は共有物ではないのでAさん以外の豆畑は貧弱なままです。

ここは非常にソロプレイ感が強く、
ソロプレイ感あるのが好きな自分でも気になるくらいでした。
ロココの仕組みにする時に、これらも共有ボードに移そうと思いました。

共有ボードに移したものの、
設備は強化されて行かなければ後半の加速感に繋がらないと思ったので
強化は必要だと思いました。

この時に設備を全員の物とし、設備を強くしたら全員に恩恵があるようにしました。
しかし、他人のために設備を強化するだけではそんな行動はしないと思います。
ここでマジョリティによる勝利点の獲得を入れようとなったのです。

でもマジョリティは前述の通り、あまり好きではなかったので、
置いたらロココの噴水のように収入がもらえるようにしようと思いました。
ロココのドレスと噴水のハイブリットです。強い。

それでもゲーム後半では収入をもらう意味が薄く、
数が圧倒的に少ない場合は置く意味を感じられず、
最終ラウンドは投資をまったくやらないものとなっていました。

これがこのゲームの最後のルール修正で、即時で勝利点がもらえるようにしました。
テストプレイを重ね、ゲームの序盤では素材が欲しいだろうということで
素材を配置し、後半は勝利点がもらえるようになっています。

カードの獲得はより楽しい瞬間が増えるように追加しました。

ドレスと噴水のハイブリットに即時ボーナスがついて超強い!無敵!

その後、設備投資ではお金を使うため、アクション数が落ちることを期待し、
残業代を少しあげる調整をしたり、投資自体にかかるお金を底上げしたりしました。

■ゲームをプレイしやすくする調整
依頼カードと労働力の管理方法を整備しました。

当初は依頼カードごとに労働力を持って管理していました。
獲得した依頼カードの上に労働力を示すキューブを乗せて
依頼カード上のキューブがなくなると期限切れとなり、失敗としていました。

しかしテストプレイではいつも依頼カードごとにキューブを一つ残すように
プレイされる状況になってしまいました。
(どの依頼カードの労働力を消耗しても良いというルールだったので。)

それでは定期的にやってくる期限として機能していないと思い、
依頼カードごとに労働力を管理するのではなく、
依頼カード全体で一つの労働力を管理するようにしました。

これが製品版でも採用されている、
獲得した依頼カードに書かれた数字まで労働力を補充する仕組みです。

そして依頼カードの達成条件を分割し、より達成しやすいものにしました。

何も持たずにステーションへ行くだけで依頼を達成できます。
そして追加で素材を支払えば追加点がもらえるようにして、達成自体はとても簡単なものになりました。
これにより、宇宙で少しだけ柔軟な動きができるようになりました。

■プレイしやすく、カッコいいアート
ゲームの全てのアートは長谷川登鯉さんによるもので、
説明書やサマリーの図は長谷川登鯉さんが切り出し、
文字の流し込みやレイアウトは井上磨さんが作業していただきました。

長谷川さんはUIの勉強会を開いていて、
そこでいろいろなことを学ぶことができると思いますので、
機会があったら是非参加してみてはいかがでしょう?

勉強会事態に参加したことはないのですが、
自分の環境でスライドショーが動くか起動テストをするために
勉強会で使われる資料を見たことがあります。

プロジェクトユニバースで
「設備の名前をこうしてほしい」と長谷川さんに言われたことがあり、
その時すでに資料を見ていたので、きっと資料のあれのことだなと思い、
名前を直したりしています。

そして、長谷川さん、磨さんは入稿ギリギリの時に
とてもバタバタしてしまって本当に申し訳なく思っています。

買ってくれた皆さんにとってはどうかわかりませんが、
自分にとっては最高のゲームができてとても嬉しいです。

デザイナーズノート自体はここでおしまいです。

このゲームを遊ぶ際のヒントを書こうかなーと思いましたが、
自分はゲームの攻略をするのが楽しいところだと思うのでやめておこうと思います。

そんな、プロジェクトユニバースは以下のお店で購入することができます。

ボドゲーマさん

コロコロ堂さん

イエローサブマリンさん

バネストさん

よろしくお願いいたします!(マメィもよろしく!)
posted by やざわ at 16:49| 自作ゲーム:プロジェクトユニバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月17日

デザイナーズノート-プロジェクトユニバース(原型)

HOYGAMESのやざわです。

ゲームマーケット2019秋では「プロジェクトユニバース」を新作として販売しました。

このゲームは制作期間が2年と、今まで作ったゲームの中で最も長期間で、
大規模なゲームとなりました。

これがどんな流れで作られたのか、文字に残しておこうと思います。

デザイナーズノート-プロジェクトユニバース(始まり)の続きです。

このゲームがどのような流れで変わっていったのか、
こちらの資料を参照していただくとわかりやすいかもしれません。

■ファーストコントラクター
山内さんから頂いた要素は以下のものがあります。

・ロケットに荷物を積んでステーションに運ぶ
・依頼には期限がある
・ロケットのパーツを製作したり、それに値付けをして売りに出したりする
・ロケット発射台に所有者がいて、使わせてもらうことで利益を得る

当時要素を整理した情報を見てみると、
1ラウンドが6フェイズになっており、アクション種類は6種類、
フェイズごとに手番性だったり同時だったりと処理が煩雑だったりしていました。

一つ一つ実際に試していき、問題点を出し、削除したりしていきました。

■パーツ関連
まず取り組んだのが、パーツの作成と値付け、売り出しに関するルールです。

作成するためには何かが必要で、
作成したパーツはどんなものなのかということを考えました。

おそらくコストが書かれたパーツタイルみたいなものがあり、
それを獲得することでロケットの性能が上がるんだろう、と思いました。

開発できるパーツタイルを並べ、そこからどれを開発するかを選ぶような感じです。

開発したパーツはおそらく性能の良いものなので、
初期装備はいらない装備として値付けして、売りに出します。

ここでこの流れが良くないことに気づきます。
おさがりの装備は誰も欲しがらないので値付けをする意味がありません。

パーツ制作したものが性能の良いものであれば、
すぐさま自分のものにすることになります。

ではこれを少し微妙な性能にして、それを売って稼げるという流れに持っていくか?
となるとそんなに性能の良くない装備はいらないので買わない。

たとえ初期装備より強いからしょうがない…買っていこう!という流れになったとしても、
それはゲームのサイクルやテンポが落ちるだけで良くないと思いました。
微妙な性能にする意味はないですね。

ならばと思い、制作したパーツは必ず自身の売り場に行き、
自分で買う必要があるとしてみようと思いました。
高値で値付けしておけば他人に買われづらいけど、自分でも買いづらい。

面白そうな感じはしたのですが、実際は煩雑でした。
自分/他人が買った時の処理が面倒だったり、
パーツ制作した後の値付けのダウンタイムが気になったり、
他人に買われたときは自分が買うつもりだったのに
意図せず買われちゃったというのがあまりうれしくないと思ったので、
他人からパーツを買うという要素は削除しました。

■ロケットの発射台の権利
自分の発射台を使ってもらえると嬉しい、を目指した要素です。

権利を持つということは、権利を得るフェイズのようなものが必要で、
その後発射に至るというのを想像しました。
その方法だとテンポが良くないかもしれないと感じました。

そこでStefan Dorra & Ralf zur Linde作の
「メドゥリス」のような形にしたらどうかと考えました。

制作の当初はプレイヤー一人は複数のロケットを持つ構想でいました。
発射台も複数あり、各プレイヤーはロケットを発射台に配置していきます。

発射台ごとに最寄りの宇宙ステーションや発射コストが違うというものになっていて、
最初に発射台にロケットを置いたプレイヤーは銀行にコストを払います。

次に誰かのロケットがすでに置いてある発射台に自分のロケットを置いた場合は、
置いてあるロケットの持ち主全員にコストを払うというものです。

しかし、ロケットが複数あってもあまり有効に使えなかったため
複数ロケット所持の案がなくなり、
結果としてロケットの発射台の権利収入も微々たるものとなり、
この要素もなくなってしまいました。

■依頼とUI
プレイヤーは荷物を運ぶ依頼を期限内に達成していく必要がある。
では、その期限をどうやって表現するかを考えました。

各自の個人ボードにあと残り3ターン、
残り2ターンみたいな表示がある個所にカードを置いて
手番が来るたびスライドさせていくか?

一括でラウンド終了時にしても良いかもしれない…。

その当時は「ブレーマーハーフェン」を思い出し、
カードに時間トークンを置いていき、
指定の枚数溜まったら期限というのが、
視覚的に分かりやすくて良いなと思っていました。

それと同時期に「クランズオブカレドニア」を遊んでいて、
目標カードの獲得コストを見て、依頼カードの仕組みを閃きました。

「クランズオブカレドニア」は
目標カードを獲得するときにお金を支払う必要があるのですが、
その金額はラウンドごとに違います。
後半のラウンドになるたびに金額は増えますが、
1ラウンド目は、支払うのではなく5金がもらえます。

これを見た時、このデザイナーは1ラウンド目は目標を取れよ、
というメッセージを込めたんだなと感じました。

それと同時に、
目標カードには「期限」というリソースが乗っていて、
これを消費することでアクションをしていくのはどうだろうか?
期限が0になるとその目標は失敗となるようにしよう、と。

これにより、プレイヤーはいつかのタイミングで
期限を獲得するために必ず目標カードを獲得することに意識が向くようになります。

期限の数を取るか、達成の難易度を取るかをざっくりとではありますが、
真剣にプレイヤー自身の責任で目標の獲得を行うようにしたかったのです。

「ブレーマーハーフェン」と「クランズオブカレドニア」。
この二つのゲームが依頼カードの仕組みを生み出し、
自分の本業ともリンクし、発想が膨らみました。

このゲームは面白くなるという確信を得て、
テンションの上がった自分は、
山内さんに頼まれた12月中にひたすらゲーム制作をし、
かなりの回数のバージョンアップをしました。

ちなみに依頼カードの仕組みは最初のバージョンより整理をして、
今の形に落ち着いたため、とてもマイルドになりました。

■カウントダウン
依頼カードの「期限」はすなわち時間だと考えた自分は、
プレイヤーが期限を消費するたびにゲーム内の時間も経過していくだろうと考えました。

プレイヤーがアクションで消費した「期限」をしめすキューブを、
ボードの周囲に置いていき、規定数までたまったらラウンド終了としようとしました。

これが非常にスリリングで、製品版でも調整された姿で残っています。

しかし、このカウントダウンの調整が相当に大変でした。
どのアクションでどれだけ時間を進ませるか悩みました。

アクションの強力さに応じて消費量を増やしたりすると、
全員が消費量の大きいアクションをしたときあっという間に時間が進み、終了してしまう等
カウントダウンのトラックを伸ばしたり、
アクションに必要な期限の調整に時間を取られました。

初期は残業システムはなく、時間が来たら即終了だったので、
理不尽さがより一層強かったのです。

■アクションの選択
手番のアクションの選択方法に関してはまったくアイディアがありませんでした。

とりあえず過去作の「ドラゴン」、つまり「コンコルディア」の方法で
カードに書かれたアクションをしていこうと思いました。

これは口で○○します!というよりも視覚的にわかりやすいだろうという
なんとなくの理由でした。

プレイヤーは全てのアクションに対応するカードを持って1枚使用して、
アクションするという流れです。

カードは使い切ったら「回収」カードで使ったカードを全て手札にもどします。

わかりやすい仕組みではあるものの、
このゲームでは行うべき工程がそこそこあり、
かなり先の手まで計画できていました。

1手を打つ際にかなり先まで考えてアクションし、
途中で予定が狂うと計画を1から考えてアクションすることになります。
毎手番、全員が長考をする、1手1手が重いゲームだったのです。

これに関しては答えが見いだせず、
1年くらい、いろいろなバージョンを試しました。

老師敬服式にするか、ブルゴーニュのようなダイスアクション選択にするか、
変更するたびに時間経過の調整をする必要もありました。

どうにかして1手の重さを軽減したいということと、
時間経過の調整が大きな課題となりました。

■ロケットの打ち上げ
ロケットの打ち上げは「打ち上げフェイズ」で
全員がそれぞれ必要な素材を支払って、
各々が達成できるかを判定するという形で考えていました。

試してみてあまりに作業的で、
一人の判定が終わるまで他の人はそれを見ていることになります。

これは非常に良くないと思いました。

前々から、
いつか使いたいと思っていた「スパイリウム」というゲームの
任意タイミングでのフェーズチェンジを導入しようと思いました。

スパイリウムでは、
前半にワーカーの配置をし、
後半に進むことを選択すると以降は配置ができなくなり、
配置したワーカーを発動させるフェイズになります。

早く後半へ行き発動しないと欲しいアクションが取れなかったりしますが、
前半置かなさすぎるとアクション数が少なくなってしまう、
という悩ましさがあります。

こちらでは「打ち上げフェイズ」は無くしてしまい、
アクションフェイズ内で打ち上げるようにし、
打ち上げると今までできていたアクションができなくなるという風にしました。

これがカウントダウンと非常に相性がよく、
打ち上げのタイミングがこのゲームの肝になりました。
これは製品版でも変わらず体験できると思います。

デザイナーズノート-プロジェクトユニバース(調整)へ続く
posted by やざわ at 13:53| 自作ゲーム:プロジェクトユニバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする