ゲームマーケット2019秋では「プロジェクトユニバース」を新作として販売しました。
このゲームは制作期間が2年と、今まで作ったゲームの中で最も長期間で、
大規模なゲームとなりました。
これがどんな流れで作られたのか、文字に残しておこうと思います。
デザイナーズノート-プロジェクトユニバース(原型)の続きです。
このゲームがどのような流れで変わっていったのか、
こちらの資料を参照していただくとわかりやすいかもしれません。
■根幹の確定今までのことを踏まえ、根幹が決まっていきました。
・依頼カードによるリソースの獲得
・みんなが行動すると進むカウントダウン
・1アクションを決定して何かする
・準備と打ち上げの前後編
これは最初に打ち立てたものではなく、
手探りで何度もいろいろなことを試した結果です。
最初にコンセプトを決めよう!みたいな話を耳にするのですが、
自分の場合は一度もそのような作り方はしたことはないです。
根幹だけが決まったとしても、ゲームは何も機能しません。
これから細かいところの積み重ねをしていきます。
■労働力の調整ゲームの制作中、最も時間がかかりました。
労働力の調整をすると以下の部分に影響していました。
・依頼による獲得数
・アクション個々のコスト
・カウントダウンのリミット
例えば依頼を獲得したときに得られる労働力が増えれば、
依頼を獲得する回数が減ります。
依頼に目を向けてほしいという部分から離れてしまいます。
かといって極端に減らせば、
依頼獲得のアクションを頻繁に行う必要があり、
自分がゲームを作っているときに一番大事なところと思っている、
「自分がこの一手で前進したな。」という感覚が薄れてしまいます。
当初はどのアクションをするにも労働力をコストで使っていて、
使用した労働力分、時間が進むという形にしていました。
非常に長い時間トラックがあり、労働力を使用するたび、
使用した労働力分の白いキューブを時間トラックに置いていました。
この二つの関係はかなり相性が悪く、
1年近く何度もアレコレ調整と修正を加えていました。
強力なアクションだからと労働力のコストを高めれば
同時にラウンド終了が早まってしまう。
時間を延ばすと緊張感がなくなり、
使用されたアクションによっては長いラウンドになってしまうこともありました。
加えて、いちいち時間トラックに白いキューブを置く行為も面倒で、
各自の個人ボードに一定量まで白いキューブをスタックして置き、
規定数まで溜まったらトラックに置く等、
コマを置く回数を減らそうという工夫もしたものの、
余計にめんどくさくなってしまいました。
この調整の方向に限界を感じ、方向転換をしたのです。
■問題の解決調整を重ねていて次のような問題が出ていました。
・1手の重さからくる長考問題
・困難な労働力の調整
・やぼったいカウントダウンの処理
・理不尽なラウンド終了
手札に10枚近くのカードがあり、次の手番はこれ、その次の手番はこれ…と
先まで計画できてしまうとどうしても考えてしまうため、
その見通せる先をほんの少し先までに抑えようとしました。
手札を減らし、1枚に二つの効果を表示する、老師敬服のタイルのような方向で考えました。
しかしそれでも長考は無くならず、余計に組み合わせからどうするか考えるようになってしまいました。
必要な対応として、
カードで選択肢を極端に絞るのではなく、
どのカードでも最低限のアクションができれば、
1手1手慎重に打たなくなるのではないかと考えました。
そこで有効だろうと思ったのが「ロココの仕立て屋」のカードプレイシステムです。
最もランクの低い「見習い」でも、最低限のアクションができるようになっているため、
選択肢は大きく狭まらず、気楽にアクション出来るようになりました。
そしてランクはタイミングを意識させます。
最高ランクの「親方」を使用した時は親方でしかできないことを選びがちになります。
そのタイミングでしかできないことに優先度は高まり、
自然にプレイヤーの選択肢が狭まるようになっていると思います。凄い。
「ロココの仕立て屋」では計画フェイズというもので、
自分の山札から好きなカードを選ぶフェイズがありますが、
プロジェクトユニバースの1手1手を軽くすること、
テンポアップを目的にしていたため、
このゲームでは必要ないと思ったため、削除しています。
次に労働力の調整です。
労働力の調整とカウントダウンの処理は
上記の方向転換により同時に解決しました。
各プレイヤーの使用労働力をカウントダウンに紐づけて使うと、
作者である自分が調整とコントロールができないと判断したため、
切り離そうと決めました。
プレイヤーはカードを消費し手札がなくなるため、
手札の補充するときに時間を進めるようにすれば「回数」で
なんとなく調整できそうだと思いました。
これは以前よりマイルドになることは承知の上で変更しました。
プレイヤーの人数によって補充の回数が違うため、
時間の進みを調整する会議カードが必要になりました。
ラウンド終了タイミングが急に終わることが理不尽だという話は初期のころからあり、
全員の手番数を同じにしようかとか、トラックを伸ばそうかとか、
あまり根本的な解決策を見いだせていませんでした。
手番数を伸ばしたり、同じにしたところで準備に時間のかかるゲームなので、
プレイヤーによってはどうにもならないのです。
そこでテストプレイをしてくれていた、ちとさんから「アンドールの伝説」の話が出て、
残業システムが追加されることとなりました。
自分は「アンドールの伝説」を未プレイなので、
まったく同じなのかそうでないのかは判断できないのですが、
とりあえず、お金さえあれば手番を続けられるようにして
ラウンド終了タイミングが来ても備えられるようにしました。
今まではなすすべもなくラウンドが終わっていましたが、
対抗できる手段があるのは良い変更だったと思います。
■マメィプロジェクトユニバースの問題がたくさん積まれていた状態、
12月のうちものすごい数のバージョンアップを行い、
12月の中旬にマメィのベースを急に思いつきます。
自分はゲームのテストをする際、
視覚的に見えていないと遊びづらいと感じるため、
エクセルなどで図を組み合わせてボードやタイルを作ります。
チップは厚紙にお金サイズの図を無数に書かれた紙を貼り、
チョキチョキとハサミで切ったのち、裏面も張ります。
裏向きになって金額が見えなくなると困るためです。
プロジェクトユニバースのコンポーネント量は膨大です。
更新するたびに疲れます。
気分転換に作ってみることにしました。
意外と良さそうなことが分かり、調整し、
マメィは3月くらいにはルールが完成しました。
マメィのデザイナーズノートに詳しく書かれていると思います。
マメィのルールが固まった後はまたプロジェクトユニバースのほうに戻り、
テストプレイを行っていました。
マメィが一段落したタイミングでロココの仕立て屋タイプに方向転換し、
大幅変更を加えたので良い気分転換になったのだと思います。
■満足点と不満点せっかくロココの要素を入れるなら、自分が好きな部分を伸ばそうと思いました。
自分のロココの一番好きなタイミングは
「親方(最高ランク)カードで親方(最高ランク)カードを購入する」行動です。
親方カードは唯一カード購入ができるカードで、
この行動をすると、さっき買った親方カードが手札にあるため
次の手番でもカードが購入できます。
カードを取るの、凄く楽しいと思ったのです。
コストは低めで手軽に獲得できるようにしてあり、
何度も取る機会を設けるために、ラウンドごとの補充用の山札があります。
次にあまり好きではない要素として圧縮(解雇)とマジョリティがあります。
ロココの説明書で「親方を全て解雇しないほうが良い」という記述があったのを覚えていて、
それがどうにも好きになれなかったのです。
親方を全て解雇するとカードを増やせなくなるからです。
実際にプロジェクトユニバースでも圧縮を試したこともあります
カード効果に別のカードを破棄する効果にして、
上記の親方廃棄の問題を回避しようとしました。
しかし、いったいどのカードを使ってどれを破棄しようとしたのか、
その都度混乱してしまいました。
破棄するカードの効果を使った後、手札、捨て札、山札の中から破棄するカードを選び、
破棄したのちにアクションをするので当初アクションで何をしたかったのか、
意識が途切れて、忘れてしまうからです。
破棄を選べる場所を絞ると使用できるタイミングが限られたり、
意識が途切れるところの根本的な解決にはなりません。
または破棄は使用したカードを対象にし、
初期の親方は破棄できないとするか悩んだのですが、
ルールを減らしたい段階だったので、
余計なルールを足すくらいなら、潔く圧縮はなしとして、
カードを集めたら集めた分だけ得点になるようにしました。
そして、マジョリティです。
数比べをして多くの数を占めている人が得点を得るという仕組みですが、
頑張ったのに全く意味がなくなるときが、「前に進んでない感じ」がして、
どうにか自分好みに改善できないかと思ったのです。
ロココにはあったドレスのようなものはプロジェクトユニバースにはないので、
マジョリティについては考える必要はなかったのですが、
後述の設備投資に組み込まれることになりました。
■設備投資当初、設備は各自の個人ボード上に持っていて、
それを改善して行くというものになっていました。
つまり、Aさんは豆畑を凄く改善されたけど、
その豆畑は共有物ではないのでAさん以外の豆畑は貧弱なままです。
ここは非常にソロプレイ感が強く、
ソロプレイ感あるのが好きな自分でも気になるくらいでした。
ロココの仕組みにする時に、これらも共有ボードに移そうと思いました。
共有ボードに移したものの、
設備は強化されて行かなければ後半の加速感に繋がらないと思ったので
強化は必要だと思いました。
この時に設備を全員の物とし、設備を強くしたら全員に恩恵があるようにしました。
しかし、他人のために設備を強化するだけではそんな行動はしないと思います。
ここでマジョリティによる勝利点の獲得を入れようとなったのです。
でもマジョリティは前述の通り、あまり好きではなかったので、
置いたらロココの噴水のように収入がもらえるようにしようと思いました。
ロココのドレスと噴水のハイブリットです。強い。
それでもゲーム後半では収入をもらう意味が薄く、
数が圧倒的に少ない場合は置く意味を感じられず、
最終ラウンドは投資をまったくやらないものとなっていました。
これがこのゲームの最後のルール修正で、即時で勝利点がもらえるようにしました。
テストプレイを重ね、ゲームの序盤では素材が欲しいだろうということで
素材を配置し、後半は勝利点がもらえるようになっています。
カードの獲得はより楽しい瞬間が増えるように追加しました。
ドレスと噴水のハイブリットに即時ボーナスがついて超強い!無敵!
その後、設備投資ではお金を使うため、アクション数が落ちることを期待し、
残業代を少しあげる調整をしたり、投資自体にかかるお金を底上げしたりしました。
■ゲームをプレイしやすくする調整依頼カードと労働力の管理方法を整備しました。
当初は依頼カードごとに労働力を持って管理していました。
獲得した依頼カードの上に労働力を示すキューブを乗せて
依頼カード上のキューブがなくなると期限切れとなり、失敗としていました。
しかしテストプレイではいつも依頼カードごとにキューブを一つ残すように
プレイされる状況になってしまいました。
(どの依頼カードの労働力を消耗しても良いというルールだったので。)
それでは定期的にやってくる期限として機能していないと思い、
依頼カードごとに労働力を管理するのではなく、
依頼カード全体で一つの労働力を管理するようにしました。
これが製品版でも採用されている、
獲得した依頼カードに書かれた数字まで労働力を補充する仕組みです。
そして依頼カードの達成条件を分割し、より達成しやすいものにしました。
何も持たずにステーションへ行くだけで依頼を達成できます。
そして追加で素材を支払えば追加点がもらえるようにして、達成自体はとても簡単なものになりました。
これにより、宇宙で少しだけ柔軟な動きができるようになりました。
■プレイしやすく、カッコいいアートゲームの全てのアートは長谷川登鯉さんによるもので、
説明書やサマリーの図は長谷川登鯉さんが切り出し、
文字の流し込みやレイアウトは井上磨さんが作業していただきました。
長谷川さんはUIの勉強会を開いていて、
そこでいろいろなことを学ぶことができると思いますので、
機会があったら是非参加してみてはいかがでしょう?
勉強会事態に参加したことはないのですが、
自分の環境でスライドショーが動くか起動テストをするために
勉強会で使われる資料を見たことがあります。
プロジェクトユニバースで
「設備の名前をこうしてほしい」と長谷川さんに言われたことがあり、
その時すでに資料を見ていたので、きっと資料のあれのことだなと思い、
名前を直したりしています。
そして、長谷川さん、磨さんは入稿ギリギリの時に
とてもバタバタしてしまって本当に申し訳なく思っています。
買ってくれた皆さんにとってはどうかわかりませんが、
自分にとっては最高のゲームができてとても嬉しいです。
デザイナーズノート自体はここでおしまいです。
このゲームを遊ぶ際のヒントを書こうかなーと思いましたが、
自分はゲームの攻略をするのが楽しいところだと思うのでやめておこうと思います。
そんな、プロジェクトユニバースは以下のお店で購入することができます。
ボドゲーマさんコロコロ堂さん
イエローサブマリンさんバネストさんよろしくお願いいたします!(マメィもよろしく!)